欠史八代天皇は実在した

 十代崇神以前の八人の天皇については、事績の記述がほとんどなく、寿命が異常に長い天皇がある。そのため、今日の研究者の多くは、これらの天皇は実在しないとする。一般に欠史八代と称される天皇である。
だが私は間違いなく実在したと考える。

なぜなら、大和朝廷と関わりを持った、古代有力氏族の系譜の中に、欠史八代天皇が登場する。
これら有力氏族の系譜伝承は、婚姻を通じて系譜同士が相互につながりを持つ。婚姻関係にある人物は同時代の人である。一部を除いて、それらの世代位置に矛盾はない。世代位置に整合性を持たせ、架空系譜を作成することは不可能である。したがってこれらの系譜伝承は、史実を反映し、その系譜に登場する天皇も実在したのである。

 その一例を挙げる。次の図は古代有力豪族系譜に登場する天皇を赤字で記す。

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中でも『先代旧事本紀』の物部氏系譜は、欠史八代天皇のすべてが登場する。

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そしてこの物部氏は、複数世代で、三上氏と婚姻関係にある。更に三上氏は、中臣氏との間にも婚姻関係がある。婚姻関係にある人物同士は、同時代の人で、この世代位置を検証することによって、系譜の検証が可能である。

『先代旧事本紀』の物部氏系譜と三上氏系譜では、そのままでは整合性が得られない。だが、三上氏系譜伝承で物部氏系譜を修正すると、両者の世代位置に整合性がとれる。更に物部氏系譜は、出雲氏系譜と婚姻関係があり、出雲氏系譜は、大神氏系譜とも婚姻関係を持つ。この大神氏の女性が初期の天皇の皇后となる。そして大神氏は大倭氏とも婚姻関係にある。

このように、大和朝廷周辺の有力豪族は、婚姻関係でつながっている。このような関係を織り込んだ、架空系譜を創作することは不可能である。したがってこれらの系譜は、一定の史実に基づく伝承であり、これらの系譜に登場する天皇は実在したのである。

(古代有力豪族の婚姻関係を示す系図)

 ただし実在否定論者が主張するように、現実にはありえない天皇の寿命は、事実ではない。
おそらく初代神武を実際より、古い時代の人と設定したために、ありえない長寿とするのであろう。その点では、初代神武の即位を紀元前660年とするのは史実ではない。
 


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